開会式が終わり、いよいよ試合の始まりである。
各ブロックに分かれて開始される刻々と順番が迫って来る中、緊張は選手だけでは無く応援する側も緊張感でいっぱいである。
お祖母さんに至っては拝み始め、他の応援団は手に汗を握りその瞬間を待ち望んで居るのである。
そして、いよいよ順番が来た。
道着を颯爽と身に着けた姿は、若武者を想わせる出で立ちであり、私の胸にも熱いものが込み上げて来たのである。
過去に立ち上がれと叱った時もある、涙を溜めながら立ち上がったあの子が今、目の前で白線の前に選手として立って居るのである。
師の立場としては感無量であり、ここまで頑張って来た弟子に拍手を送りたい心境である。
そして相手選手も白線の前に立った瞬間に、相手選手が両腕を道着の中に入れたのである。
主審は訝しげに相手選手に何やら尋ねたが、納得した様に下がり副審と協議し試合は始められた。
その後に審判に尋ねたところ、選手が相手に両腕が無いのに自分が腕を使うのはフェアでは無いので、腕を使え無い様に道着の中に閉まったと云うのである。
試合が始まり、両雄が正々堂々と持てる力を発揮した。
なかなか決まらない。
やがて時間切れを迎えたこの判定には、主審も副審も頭を悩ませたが引き分けにせず、両者勝利と云う結論を出したので有ります。
当然ながら相手選手の道場も賛同し、私も賛同したのである。
やがて決勝戦も終わり当道場が優勝し、あの子と戦った選手の子も最優秀賞に選ばれたのである。
場内は破れんばかりの拍手が巻き起こり、感動の瞬間を迎えたので有ります。
人は如何なる境涯に有ろうと、精一杯の努力は必ず報われる日が来るのである。
涙は心の汗、苦労は魂を磨く磨き砂である。
南無大日大聖不動明王尊
蓮華合掌
金剛山赤不動明王院
院主 永作優三輝
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