毎日の祈祷の中でフッと、過去の悲しい祈祷を思い出します。
雪が舞う寒い朝に、其の方は訪ねて来ました。
受付では寒いので、相談室にお上がり頂き、熱いお茶を用意しようと思い席を立とうとすると。
唐突に『頼る処が、此処しかありません!娘を助けて下さい』と泣き崩れられて、後は言葉に成りません。
他の者にお茶を頼み、御婦人の落ち着くのを待ちました。
御婦人が落ち着かれ、話し始められました。
実は、娘が三日経っても帰って来ないので、警察に捜索願を出しました。
今朝、自分の夢に悲しそうな娘が立って、聞こうとすると、大きな音で目が覚めました。
音のする方を見ると、娘の部屋の扉が開いて居たと言うのです。
このままでは、居ても立っても居られません。
目には涙を溜めて居られ、愚僧もそれ以上は聴く事が出来ません。
早速、壇を整え不動明王法を厳修。
炎の中に観えたのは、娘さんの姿でした!
もう此の世の人ではありません!
愚僧は、意を決して申し上げました。
御婦人が帰られた日の午後に警察から連絡があり、娘さんの遺体が発見されたと。
遺体を引き取り、通夜葬儀は、愚僧を指名されたので勤めさせて頂きました。
あの朝の音は、娘さんの御別れの印だったのです。
まさに虫の知らせでした。
今は、娘さんの冥福を祈ると共に、御婦人が一日も早く元気を取り戻す様に、ご本尊様に御祈念申し上げております。
神仏は、人間に耐えられ無い試練は与えません。
苦しくても、耐えた後にはしあわせが待っています。
頑張りましょう。
蓮華合掌