私が尊敬する日本画家の〇〇氏は、腕と足がありません。
口に筆をくわえて、見事な素晴らしい日本画を描かれます。
それはまさに芸術であり、観る人に感動を与えます。
今は亡き〇〇氏から伺った話しを、尊敬を込めて書かせて頂きます。
氏の幼い頃の家は、貧しい農家でした。
それでも、正月にはお母さんが、新しい下駄を用意してくれ、氏は嬉しさに飛び回りました。
母は、そんな我が子を愛おしく、見守って居られました。
氏は、その下駄をかあさんの下駄と呼び、大切にしました。
或る雪の日。
電車の踏切を渡るとき、雪で、線路の溝も解りませんでした。
何時も、歩いて渡って居る線路。
その日も、何時もと同じように渡れるはずでした。
しかし、誤って線路の溝に下駄が挟まってしまい、如何やっても取れません。
今考えれば、下駄を諦めれば良かったのですが、かあさんが苦労をして買ってくれた下駄。
諦める事など、出来るはずがありません!
子供の力で、必死に取ろうと頑張って居た所に電車がやって来て、少年の両腕と足は轢断されてしまいました。
医師が止血をしましたが、当時の医学は今の医学とは比べものになりません。
結局、腕と足は壊死し、腕と足は付け根から切断し、ダルマのような姿になってしまいました。
お母さんは嘆き悲しみ、親子心中を図ろうとも考えたそうです。
氏は、幼い頃から絵の才能があり、優しい少年でした。
お母さんは、筆の持て無い氏を後ろから支えました。
そして氏に、『 口に筆をくわえて描いてごらん。』と言いました。
墨を程よく漬け、氏の口に。
氏は首を動かし、必死に挑み続け、その後、立派な日本画家に成られました。
生前の氏は、私の絵は母と二人の絵と仰られ、数々の作品を残されました。
南無大日大聖不動明王尊
蓮華合掌
金剛山赤不動明王院 院主 永作優三輝
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