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密教656 母の念

子供を想う母親の念は、ある一定段階を超えた時、凄まじい念を発することがある。

古い文献には、母親の念について様々な事例が書かれて居ります。
一例を挙げれば、子供の頃に囲炉裏で火傷を負い、其れでも一流画家に成った先生とお母さんの話がある《以下仮名》



A先生は幼い頃、囲炉裏に手を入れてしまった為に指が動かない。

しかし、両手で筆を挟み持ち、素晴らしい絵が書かれる画家である。

事故が起きたのは、ハイハイし始めた幼い頃。
お母さんがチョット眼を離した瞬間に、囲炉裏の中に手を入れて居た。

母は急いで病院に走った。
しかし火傷は深く、医師が言うには『大きくなっても指は動かない』

お母さんは誓った。
この子の手に自分が成ろう。と!

やがて小学生に成ったA氏は、お母さんが作った手のひらベルトに鉛筆を挟み勉強し始めたのです。
成績はぐんぐん伸びて、首席を取るところまで成長した。

そして、最もうまかったのが絵である。

美術の先生が、この子は将来、美大に進学する事を勧めます。とお母さんに言いました。

お母さんはその日から、仕事を掛け持ちで働き、預金する事にしたのです《お父さんは戦死》

しかし、まだその時代には女性にまともな仕事などありません。
賃金も最低である。

やがて息子は大学受験、見事に美大に進学し才能を開花させます。
そして卒業前の課題で問題が発生した。
裸婦を描かなくてはいけない状況に成ったのです。

高いモデル料を支払うことが出来ない。
苦労を掛けた母に、これ以上お金の苦労を掛けられない。

A氏は考え、母の暮らす田舎に帰郷する。

母は、なんで卒業前の大事な時に田舎に帰って来たのか。と息子を問いただしました。

お母さん、僕は卒業しなくても良いよ。
これ以上、お母さんに苦労を掛けられない。

と云うと、母は『何を言って居るんだいお母さんだって女だよ、お母さんを書きなさい』

しかし、モデルは何時間も同じ姿勢を保たねばならない。
ましてや真冬、ストーブも無く囲炉裏だけの家。
隙間風が入り、ただでさえ寒いのに裸でモデルなど出来る訳が無い。

息子は、母にせめて火鉢の温もりを。と火鉢を母の側に置いた。
デッサンに入り数時間、母は微動だにしなかった。
そして完成。
その絵を提出しました。

見事に特選を獲得し、首席で卒業。
母に卒業証書を見せたくて、夜汽車で家路につくと、母は病の床に伏せって居ました。

母を気遣って医師を呼ぼうとすると、母が止めた《医者は嫌だ》

その時、手伝いに来て居たおばさんが一言。
『お母さんの布団を上げてご覧』

息子は母の布団をめくって観て驚いた。
太ももが火傷で大変な状態である。

《母はモデルになって居た時に、寒さと疲労で何度も意識を失いかけた時、

火鉢の中にある火箸で自分の太ももを焼いて、意識を保つて居たのです》

其れからしばらくして、母は死にました。

しかし、死ぬ前に息子に言いました。

お母さんは、あんたの立派な姿を見られた事が最高のしあわせ。

母の愛は精神力を極限まで高め、正に念の領域である。


南無大日大聖不動明王尊
蓮華合掌
金剛山赤不動明王院 院主永作優三輝


by kongousan-akafudo | 2017-09-22 06:00 | 赤不動明王院通信
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