祈祷僧は、依頼主から依頼されて始めて行動開始です。
その日の相談は、海で溺れて行方不明の娘さんを引き上げて、まともな葬儀をしてやりたい。
と云う母親の涙の願いです。
海の深さを、昔の人は、一尋、二尋と表しました。
両手を水平に広げて、指先までが一尋です。
霊視すると、海藻が絡まり、浮かぶことが出来ません。
考えました。
あの仏に出陣願わなくては無理であろうと。
その仏様の名は、青面金剛尊。
手に三叉戟と法輪を持ち、別の手にはショケラを掴む。
ショケラとは、悪神シバと伝えられている。
身体に巻いているのは二匹の大蛇、一匹の長さ三千尋。
この仏しか無い!!
早速壇を組み、青面金剛の掛軸を本尊に祈祷開始。
祈祷は、一昼夜に及んだ。
そして、翌日。
電話で、お願いしてあった魚恊組合に船を出して頂き、沖に向かって船出。
青面金剛尊が指定された場所に到着。
漁師さんに、例の物を海中に入れていただき、愚僧は読経すると漁師さんが一言。
掛かった❗️
ゆっくり紐をたくし上げて行くと、白い影が見えた。
船上に上げて確認すると娘さんでありました。
お母さんは泣き崩れる。
船は港に急ぎ、無線で魚恊組合に連絡。
港には警察の方々が待っていて、娘さんを検視の為搬送。
愚僧達は形式上の事情聴取を受け、娘さんの亡骸を引き取り、娘さんの実家に急ぎ帰った。
実家に到着すると、知らせを受けた親類縁者が葬儀の支度を整え、涙の出迎えになった。
亡骸はお母さんの希望で、荼毘には伏さず、実家の布団に寝かせて一晩別れをする事になりました。
愚僧は、一旦帰宅して斎戒沐浴へ。
娘さんは、復顔師により化粧が施され、美しい生前の姿に。
葬祭師も気を利かし、匂いの強い香を用意してくれて居りました。
娘さんの友人知人が弔問に訪れ、辺りは、すすり泣きの声に包まれ、哀れさを増して居た。
愚僧は、自分の柩を視ながら涙する娘さんに死んだ事を諭し、引導を渡す。
その後、娘さんの亡骸は荼毘に伏され、魂は先祖霊と共に霊界へと帰って行きました。
蓮華合掌
金剛山赤不動明王院 院主 永作優三輝
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