忘れられない思い出がある。
あれは、初秋…
今頃の季節でした。
子供が一人、寺の境内に写生道具を下げて立っていた…。
私の方を見て、何か言いたそうである。
「坊や何か用事かな?」と尋ねると、小さな声で「仏様を描かせて下さい。」
私はちょっと戸惑い、事情を聴いてみることにした…
おかあさんにお参りをさせてあげたい…と言うのである。
この子のおかあさんはお寺が好きで、良く二人でお寺にお参りして、おかあさんが仏様の話しを聴かせてくれたそうです。
坊やは、入院中のおかあさんにお参りをさせてあげたいが出来ない…。
それなら自分が仏様を描いて、おかあさんに見せたい…と私の寺に来たのです。
私は御本尊前の蝋燭と灯籠を灯し、坊やを見守る事にした。
坊やは、長い時間をかけて丁寧に仕上げている。
まさに写仏である。
坊やが「出来ました」と言うので、観てみると、そこには優しいお顔の仏様がおわしました。
私は、坊やに言いました。
「病院でもおかあさんがお参り出来る様に、坊やが描いた絵に仏様に入って頂きましょう」
坊やは驚いていましたが、説明するより観た方が分かり易いと思い、開眼供養を始めました。
坊やは、小さな手を合わせて祈っています。
私は一心込めて開眼し、開眼供養した絵を坊やに手渡してその場は別れました。
それから数日後、あの坊やとおかあさんがお参りに御出でになりました。
二人共ニコニコ笑顔で私の元にお越しになり、何時ぞやのお礼を申され、御寄進をして下さいました。
坊やも百円玉を一枚御寄進下さいました。
私は親子の前途を祈り、加持祈祷をして御本尊に祈りました。
祈祷も終わり、親子が帰る時…仏様に御寄進された証しは残して中身を親子に渡しました。
かなり遠慮はされましたが、「仏様からのお下がりです」と言うと母の眼には、涙が…
坊やには、「仏様からのご褒美だよ」と言って五百円玉を一枚握らせました。
坊やは、増えている…と、眼を丸くして驚いている。
その傍らで、深々とこうべを垂れる母の姿に愚僧も涙を禁じ得ませんでした。
私の僧侶生活の中で、最良の開眼供養でした。
帰路につく母子の後ろには、御本尊の眷属が護りにつかれております。
南無大日大聖不動明王尊
蓮華合掌
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